現象学

「現象学」という用語は、哲学史上、18世紀のドイツの哲学者ヨハン・ハインリッヒ・ランベルトの著書『新オルガノン』に遡ることができるとされる。「現象学」が指し示す概念は、哲学者によって大きく異なる。また、エトムント・フッサールのように、1人の哲学者においても、その活動時期によって、概念が変遷している例もある。下記に代表的な3つの「現象学」の概要を記す。

ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル (1770 - 1831) が1807年に出版した著作『精神現象学』(Phänomenologie des Geistes) の中で、「現象学」は主観的意識から現象の背後にある絶対精神を把握する哲学の手引きとして示される。弁証法的現象学と呼ばれることがある。

19世紀末、心理学主義・生物学主義が興隆するヨーロッパ思想界を背景に、諸科学(数学・物理学)の基礎づけを行うことを目標にして、フッサール (1859 - 1938) が提唱した、学問およびそれに付随する方法論を超越論的現象学 (独: transzendentale Phänomenologie) と呼ぶ。超越論的現象学では、認識論的批判に無関心な、存在(=「超越」)を自明なものとして捉える「自然的態度」を保留にした状態で、存在と「意識」との関係及び、それぞれの意味が志向性から反省的に問われる。なお、後期フッサール(1920年代以後)においては更なる深化を遂げ、前-意識的な領域(現象が現象として成立する地平)を問う発生的現象学(独: genetische Phänomenologie) が唱えられる。

マルティン・ハイデガー (1889 - 1976) において、超越論的現象学は批判的に摂取され、「存在者」の「存在」を存在の明るみに出す、解釈学的な方法として用いられる。ハイデガーの現象学は、解釈学的現象学と呼ばれることがある。

本項では、「解釈学」と共に現代ドイツ・フランス哲学の二大潮流を形成し、ハイデガー、ジャン=ポール・サルトル、モーリス・メルロ=ポンティ、エマニュエル・レヴィナス、ミシェル・アンリ、ジャック・デリダらに批判的に継承された「現象学」(上記2・3項)について述べる。

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