思考の過程

思考とは、何らかの事象へ反射的に行われるものではなく、複雑な内的過程を経て結論へ導かれる考えである。この過程を段階的に捉える試みは数多くあり、多様な説明がなされている。

次の例では、思考過程を5つの過程で説明する。1) 分析では、単位情報をそれが持つ要素や性質まで分解すること 2)総合では、分解した要素や性質に着目し情報を結合させること 3)比較では、分解した要素や性質を比較して情報間の相違や類似部分を洗い出すこと 4)抽象では、情報の本質は何かを見出すこと 5)概括では、見出した情報の本質をまとめ上げることである。

思考には不可欠である言葉(ロゴス)と関連させ、思考‐言語を相関させた3段階で成された説明もあり、これは思考の「概念」「判断」「推理」を言語の「名辞」「命題」「推論」の作用と対応させている。思考は先ず、「概念 (concept)」の形成から始まる。これは複数の対象に共通する特徴を把握し、それらを包括的・概括的に認識することにあり、対象群を抽象化する過程、本質的な特徴を見極めること[2- 11]でもある。この把握された特徴は言葉によって表され(「名辞」)、概念として認識されることになる。このような特徴は、名辞された言葉が持つ意味内容と紐付けされた内包 (intension) 要素と、言葉が適用される対象の範囲を示す外延 (extension) 要素の2つで構成される。概念が構成されると、次にそれらを組み合わせて大きな単位を作る段階である「判断 (judgment)」 ‐言語単位では「命題 (proposition)」 ‐に入る。これは対象である存在 (being) とその性質や特徴を示す属性 (attribute) または複数の対象間にある関係 (relation) について、主語‐客語‐連辞という文章形式で組み立てられる[2- 12]。判断が構成されると、次にこれを前提に置いて結論が導き出される。この過程は「推理 (inference) 」‐言語単位では「推論」‐と呼ばれ、ひとつ以上の真実と思われる判断を元に、別の判断を真実とみなす思考の作用である。この推理を進める方法には、経験を排除し論理に基づいて結論を導く演繹的推理と、個別事情を勘案しそこから一般的な結論を見出す帰納的推理がある。推論の種類には、ひとつの判断から直接的に別の判断の真偽を判定する直接推論と、いわゆる三段論法のように2つの判断から結論を導く間接推論がある。

数学における反省的思考という範疇では、ジョン・デューイは思考とは5つの段階を踏むと提唱した。1) 暗示、2) 知性的整理、3) 仮説(指導的観念)、4) 推理作用、5) 仮説の検証 をそれぞれ踏む事で問題解決を成すという。これは、対象が記号化・言語化され、感覚的に捉えたそれら情報を意識的か否かに関わらず論理的に斟酌する行動を指す。

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