フッサールの現象学(本質主義/直観主義)フッサールの現象学の原理的特徴として、本質主義と直観主義が指摘される。フッサールにおける本質主義は、事実的な経験や体験に対して、本質や理念(イデア)、また形相(エイドス)などに優位を置く考えのことであるが、これは諸学の基礎づけという現象学の厳密学としての目的に起因している。数学や論理学などを、主観的かつ経験的なものへと還元しようとする心理学主義や生物学主義に対して、フッサールはむしろそのような学が、そしてまたあらゆる学が、その厳密性の条件としてイデア的な論理法則の存在を必要としていることを指摘し、これらの究極的な規則がもし存在しないのであれば、厳密学はおろかわれわれの認識の妥当性をたもつものはなにもなくなってしまい、相対主義や懐疑主...2021.04.28 04:42雑学
フッサールの現象学(時代背景とその成立)19世紀末のヨーロッパにおいては、実証科学の興隆のもと、数学・論理学の領域で、心理学主義・生物学主義的な、心理的現象から論理を基礎づけようとする思想が席巻していた。心理学主義とは、あらゆる学問の基礎を心理的な過程に基づけようとする試みである。数学の研究から出発したフッサールの関心も、はじめは心理学から、当時の数学界において論争となっていた数学基礎論を心理学的に基礎づけようとするものであった。この考えのもと、フッサールはブレンターノの記述心理学の立場から数学の特に算術の解明を目指した『算術の哲学――心理学的、論理学的諸研究』を1891年に出版した。しかし、この著作は数理哲学者G.フレーゲなどのきびしい批判を受けることとなった。その批判...2021.04.23 04:00雑学